フランスの絵画の歴史に日本の浮世絵が与えた大きな影響は、良く知られている。どうして浮世絵がフランスに渡ったかというと、陶器の輸出の際に包装紙として使われたからだそうだ。当時の日本では、浮世絵は大量生産されていて、包装紙に再利用するくらい、ありふれたものだったのだろう。ところが、フランスでは、希少なもの、新鮮な美的刺激に富むものとして、珍重されたのだ。 現在の世界の美術界における浮世絵の地位は、外国人が浮世絵を見出したことによって確立したのだ。もちろん、浮世絵を作ったのは日本人である。しかし、浮世絵の価値を作り出したのは、浮世絵を作った日本人ではなく、浮世絵を見出したフランス人だったのだ。 昔の日本人が浮世絵につけた価格は、同時代のフランス人がつけた価格とは、比較にならないくらい安かったと思われる。しかし、現在では、フランス人であろうが、日本人であろうが、何人であろうが、同じ一つの浮世絵につ