複雑な世界を複雑なまま生きることはいかにして可能か——情報技術を用いて、貨幣や投票、法、軍事システムなどを設計することによってこの問いに答えようとした『なめらかな社会とその敵』が出版されてから10年が経ちました。今年ちくま学芸文庫から刊行された文庫版にはこの10年の問題系の変化をたどる補論「なめらかな社会への断章 2013-2022」も収録され、同書が取り組む問いは現代社会においてますます重要なものとなっています。 ブロックチェーンやAI、VR/ARをはじめとする新たな情報技術の登場は、どのように社会を変えていくのでしょうか。本講演は、まず『なめらかな社会とその敵』が書かれた背景や同書が提示するビジョンを解説した上で、この10年の技術革新や社会の変化を参照しながら、私たちがいかになめらかな社会へ近づいていけるのか論じます。 【講師紹介】 1975年長野県生まれ。1998年慶應義塾大学理工学