いわゆる「要求仕様の問題」が発生する1つの側面として、要求仕様の「曖昧さ」がある。開発の指針であるはずの要求仕様が曖昧なため、後続の工程に悪い影響を与え、指針としての役割を果たしていないというものだ。本稿では、要求仕様の曖昧さを回避する方法について述べる。 厳密な要求仕様が要求される背景 曖昧さを回避する方法を論じる前に、まず要求仕様を厳密にしなければならない背景を説明する。「曖昧ではない厳密な要求仕様書」の記述法といえば、真っ先に取り上げられるのが形式手法だ。しかし、精密な制御が求められるにもかかわらず、形式手法を用いなくてよい開発対象もある。例えば複写機やプリンターなどの機能を1台にまとめた「複合機」もその1つ。複写機は我が国の輸出を支える重要な製品だが、開発において厳密な形式手法で仕様を記述をしているという話を聞いたことがない。複写機は精密な制御を行う製品だが、多少の瑕疵は許されてい