神話論理I 生のものと火を通したもの [著]クロード・レヴィ=ストロース [掲載]2007年03月04日 [評者]中条省平(学習院大学教授・フランス文学) ■歴史から構造へ 精緻な神話研究 「20世紀思想の金字塔」と称(たた)えられる書物です。あまたある構造主義文献のなかで未踏の巨峰だったのですが、ついに邦訳が出始めました。原書は40年ほど前に4部作として刊行され(邦訳は5分冊)、この前半の2作は南アメリカ先住民の神話を扱っています。 出発点はボロロ族の神話です。 ある少年が母親を犯す。父親は息子に復讐(ふくしゅう)するため、岩山に巣を作る鳥をとれと命じ、息子が上ったすきに、梯子(はしご)がわりの棒を外してしまう。息子は苦難の末、親兄弟を探して祖母と再会する。その夜、激しい雨が降り、祖母のかまどの火以外、村の火がすべて水で消えてしまう……とまあ、そんな話です。 レヴィ=ストロースは、この神