母さんは、男と子供をつくって出て行った。おばあちゃんが「女を捨てきれなかった」と呟いた。 父さんは、痛いと涙を無視して殴ってきた。おばあちゃんが「もうやめなさいよ」と叫んだ。 母さんも父さんも、別に嫌いじゃない。きっと好き。けれど、それは"親"というタグが付いてるからなのかもしれない。 ひとりの人間として見たときには、どちらともデキた人とは言えなかった。 母さんは笑顔がよく似合ってて、ユーモアに溢れ、社交的。でも、素直じゃなくて、抱えていたことを言葉にしてなかったのかもしれない。 父さんは社会人としてかっこよくて、責任感があって、頼りになる。でも、カっとなりやすくて、感情をどうしても抑えられないのかもしれない。 男に抱かれてるとき、素直じゃないねと笑われたとき、ふと過ぎる。「ああ、母さんと同じかもしれない」。 人に怒鳴りそうになったとき、手が出そうになったとき、ふと過ぎる。「ああ、父さんと