【下山祐治】奥の壁に真っ青な富士山。その手前には、鮮やかな黄色い山が、すそ野広く積まれている。お風呂大好きな日本人の心には、こんな銭湯の風景がみな、刻まれているだろう。そのど真ん中に欠かせない「ケロリンおけ」が生まれて、半世紀の物語。 ◇ オホーツク海にほど近い北海道中頓別(なかとんべつ)町。冬には雪一色になる過疎の町におととし、黄金(こがね)湯という銭湯が復活した。洗い場には、25個のケロリンおけ。元保健師の渡辺由起子さん(58)が、再開に合わせて迷わずそろえた。「お客さんも銭湯のシンボルだと喜んでくれてます」