「というと、ムッシューはトゥール・ド・フランス自転車大レースをご存知ない?」 これは「くまのパディントン」シリーズのうち70年に初版発行された「パディントン、フランスへ」のなかに登場するセリフ。物語のなかではその後、三輪車に乗って選手気取りのパディントンが大集団に巻き込まれ、ツール・ド・フランスの中間スプリント賞を獲得してしまうという奇想天外なお話が展開される。ツール・ド・フランスを四半世紀ほど取材しているボクが、最初にこの大会を認識したのは児童小説というわけだった。 児童小説といえば、アントワーヌ・ド・サンテグジュペリが書いた『星の王子さま』が日本も人気だ。ちょっと前には再ブームとなったが、そのきっかけは日本語訳の版権が切れて各社から新訳本が相次いで出版されたから。名訳といわれた仏文学者の故内藤あろう(曜の日ヘンをさんずいに)氏の誤訳を指摘する書籍もいくつかある。これまで半世紀以上もこれ