東京郊外、多摩ニュータウンの足である小田急電鉄多摩線。10月中旬の2日間、同線をちょっと不思議な「回送列車」が走った。 回送なのに全部の駅に停車し、何度も線内を往復。そして先頭車両には複数の関係者の姿が――。実は、小田急が運転士を対象にした「自動制動」というブレーキでの運転技術を磨く競技会のための列車だったのだ。 自動制動というと最新式の自動運転システムのようだが、実際には古くからある「電車のブレーキの基本中の基本」(小田急運転士経験者)で、操作は近年の方式と比べて難しい。現在は装備している車両も減り、営業運転で使うことはないという。 今、そのブレーキテクニックを磨く機会をあえて設けた狙いは何だったのだろうか。 今では珍しい「自動制動」 鉄道のブレーキはさまざまな方式があるが、基本となるのは空気圧によってシリンダーを動かし、ブレーキシューを車輪に押しつけるなどして停める空気ブレーキだ。