◆忍澤成視(おしざわ・なるみ)・著 (新泉社・1万3200円) 日本列島人の忘れられた装身具史 「今の人は結婚式でダイヤの指輪を交換するけれど、縄文人や弥生人はどうしていたの?」。私は日本文教出版の教科書執筆者。歴史教科書で上記のコラムを考えたが自分でボツにした。代わりに、地震・津波・富士山噴火や感染症の歴史を載せた。しかし、今なら書ける。本書が出たからだ。 我々ホモサピエンスはシンボルに執着する変態な生き物だ。ダイヤや金銀は高貴であるなどと装身具の素材を序列化し、希少素材の入手に命さえかける。本書はそんな日本列島人の装身具事情を追った労作である。持っていればスゴイ品、高級腕時計や高級車を「威信財」という。列島人が最長期間、威信財にしたのは貝の腕輪。なかでもオオツタノハという採取困難な南の島の貝で作った貝輪だ。縄文早期~古墳終末期(7000~1300…