(岩波新書・1056円) 奥から湧き、舞い遊ぶいとおしき「筆触」 いきなり時代をこえた列島の大問題が提出される。文字とは何か――。 パソコンやスマホで既成の字を打つのが当たり前の私たちは、こう問われると動転する。今や文字に書く人の個性が出るほうが珍しい。文字は記号である。万人に正確にとどく無個性が流通する。文字は記号である、でも本当にそうなのかな……。 何千回も何万回も墨の香る水を筆にたっぷり吸わせ、和紙に口づけるように顔を寄せて書く著者は自信をもって日本文字史をさかのぼり、あっと驚くふしぎで妙(たえ)なる<ひらがな>の生まれて育つ場に私たちを連れてゆく。