世間では、よく女は上書き保存で、男は別フォルダー保存という。 女性は失恋したら、その場ではわんわん泣くけれども、3日も経てばスパッと記憶から消し去るように、新たな人生を歩み始める。 それが世の定説だと知りつつ、わたしは、本当に好きになったひとは今でもよーく覚えている。たぶん、びっくりするくらい、覚えている。この先何十年経っても、忘れることはないだろう。 それは、好きだという恋愛感情が時間とともに溶けてしまったとしても、尊敬の念と、その尊敬する彼から教わった哲学が、精神的なDNAとしてじぶんの心に絡まって残り続けているからだろう。 「みくちゃん、僕はね、人生で後悔した思い出なんて、一度もないんだ」出逢った当初から、彼はそう鼻高々に、豪語していた。 いやいや、さすがに30年近く生きてきて、いちども後悔がないなんて、とんだ強がりかホラ吹きに違いない。わたしは、そう思った。 丸の内にある一流の上場