ブックマーク / sorae.info (91)

  • 「火星の生命」の証拠かもしれない岩石を「パーサヴィアランス」が発見

    多くの科学者は、大昔の「火星」の環境は地球と似ており、独自の生命が発生していたと考えています。火星の探査が進めば進むほど、生命の存在を肯定する証拠が数多く見つかっています。しかし今のところ、生命の存在を直接的に証明する証拠は見つかっていません。 アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーサヴィアランス(Perseverance)」の科学チームは、2024年7月25日付の記事で、数十億年前の生命の直接的証拠であるかもしれない、潜在的に重要な岩石の発見を報告しました。多くの謎が未解決のままであるため、現時点では火星独自の生命の証拠であると確定させることはできませんが、このサンプルを地球で調べることができれば、より多くのことが分かるでしょう。 【▲ 図1: 今回分析された岩石「チェヤヴァ・フォールズ」にあるヒョウ柄の斑点は、数十億年前にいた火星の生命の痕跡である可能性があります。(Cred

    「火星の生命」の証拠かもしれない岩石を「パーサヴィアランス」が発見
  • 暗黒物質検出器「XENONnT」が稀なニュートリノ衝突現象の観測に成功

    宇宙には「暗黒物質(ダークマター)」という、重力でのみ存在を知ることのできる物質が大量にあるとされています。暗黒物質は普通の物質と極めて稀に相互作用する可能性があるため、原子核と暗黒物質との衝突で発生する信号を捉える検出器が世界中に設置されています。しかし正しい観測のためには、無関係の信号であるノイズを除去する必要があります。 国際共同実験「XENON(ゼノン)コラボレーション」は、液体キセノンで暗黒物質を検出する最新の装置「XENONnT(ゼノンエヌトン)」にて、太陽から放出される素粒子「ニュートリノ」が原子核と衝突する形式の1つである「ニュートリノ‐原子核コヒーレント弾性散乱(CEvNS)」に由来する信号を検出したと発表しました。 地球の外に由来するニュートリノによるCEvNSを捉えたのは世界で初めてのことです。この結果から、XENONnTは小型の装置の割に、ニュートリノというノイズに

    暗黒物質検出器「XENONnT」が稀なニュートリノ衝突現象の観測に成功
  • 海があるかも? 太陽系外惑星「LHS 1140 b」をウェッブ宇宙望遠鏡が観測

    モントリオール大学の博士課程学生Charles Cadieuxさんを筆頭とする研究チームは、「くじら座(鯨座)」の方向約48光年先の太陽系外惑星「LHS 1140 b」について、表面が氷もしくは水に覆われた岩石惑星であり、未確認ながら窒素を多く含む大気を持つ可能性があるとする研究成果を発表しました。 【▲ 今回の研究成果をもとに描かれた太陽系外惑星「LHS 1140 b」の2つの姿(左、中央)と地球(右)の大きさを比較した図。左は太陽系の氷衛星のようにLHS 1140 bの表面全体が氷に覆われているとした場合、中央はLHS 1140 bが大気を持ち昼側に海が広がっているとした場合の想像図(Credit: B. Gougeon/Université de Montréal)】 LHS 1140 bは地球と比べて直径が約1.73倍・質量が約5.60倍と推定される系外惑星で、太陽と比べて直径と質

    海があるかも? 太陽系外惑星「LHS 1140 b」をウェッブ宇宙望遠鏡が観測
  • 「ドレイクの方程式」の修正案が提出される 私たち人類は “ひとりぼっち” なのか?

    宇宙には、私たち人類以外の文明は存在するのでしょうか? もしも存在するとしたら、それはどれくらいの数となるのでしょうか? 文明の数を推定する方法として有名な「ドレイクの方程式」にもとづくと、天の川銀河の中には多数の文明が存在すると予測できます。その一方で、ドレイクの方程式で予測される文明の数は、私たちがとっくの昔に地球外文明に出会っていてもおかしくはないはずだという「フェルミのパラドックス」との矛盾にしばしば遭遇します。 テキサス大学ダラス校のRobert J. Stern氏とスイス連邦工科大学チューリッヒ校のTaras V. Gerya氏の研究チームは、進化した生命が知性を獲得して文明を構築するには、大規模な地殻の運動である「プレートテクトニクス」の継続時間がカギを握っているのではないかと考えた研究を行いました。そして、ドレイクの方程式の項目の1つである「fi(生命が知性を獲得する割合)

    「ドレイクの方程式」の修正案が提出される 私たち人類は “ひとりぼっち” なのか?
  • ワープ航法は重力波を出す? 「アルクビエレ・ドライブ」の解析で判明

    宇宙をテーマとするSF作品には光の速さを越えて遠くへと移動するワープ航法(超光速航法)が登場するものがありますが、実際の宇宙においては禁止されているというのが現代物理学の一般的な見解です。その一方で、現代物理学の枠組みでも可能なワープ方法の考察も存在します。 ロンドン大学クイーン・メアリーのKaty Clough氏、ポツダム大学のTim Dietrich氏、およびカーディフ大学のSebastian Khan氏らの研究チームは、比較的現実味のあるワープ航法として考案された「アルクビエレ・ドライブ(Alcubierre drive)」を対象に計算を行ったところ、ワープする宇宙船が加速や減速をした時、およびワープに “失敗” した場合において、時空の波である「重力波」が生じることが分かったとする研究成果をプレプリントサーバー「arXiv」(※1)に投稿しました。 想定された重力波は現在の観測体制

    ワープ航法は重力波を出す? 「アルクビエレ・ドライブ」の解析で判明
  • 初期宇宙には “色付きブラックホール” が存在した? 暗黒物質探索の思わぬ副産物

    重力を通してのみその存在を知ることができる「暗黒物質(ダークマター)」の正体は今でもよく分かっていません。候補の1つとして誕生直後の宇宙で生成されたとされる「原始ブラックホール(Primordial black hole)」があげられているものの、その生成過程はよく分かっていません。 マサチューセッツ工科大学のElba Alonso-Monsalve氏とDavid I. Kaiser氏の研究チームは、初期宇宙で原始ブラックホールが生成される過程を調査しました。その研究の副産物として、理論的には提唱されていたものの生成ルートが判明していない “異色” の存在であった、いわば「色荷ブラックホール」とでも表現できるような存在に辿り着きました。色荷ブラックホールはあまりにも小さすぎるため、現在の宇宙には残っていないと考えられていますが、それでも初期宇宙の歴史に無視できない影響を与えた可能性がありま

    初期宇宙には “色付きブラックホール” が存在した? 暗黒物質探索の思わぬ副産物
  • 【速報】スペースX、新型ロケット「スターシップ」第4回飛行試験を実施 宇宙船はインド洋へ着水

    アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は日時間2024年6月6日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による第4回飛行試験を実施しました。Starship宇宙船は宇宙空間を飛行後に大気圏へ再突入し、予定されていたインド洋への着水を行って飛行を終えています。【最終更新:2024年6月6日23時台】 【▲ 米国テキサス州にあるSpaceX(スペースX)の施設「Starbase(スターベース)」から第4回飛行試験のために打ち上げられた新型ロケット「Starship(スターシップ)」。SpaceXのライブ配信より(Credit: SpaceX)】 Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長121mの再利用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ば

    【速報】スペースX、新型ロケット「スターシップ」第4回飛行試験を実施 宇宙船はインド洋へ着水
  • 月の裏側の資源開発に不可欠な電力をわずか3機の人工衛星がワイヤレスで供給するアイディア

    月の裏側での宇宙開発がまた一歩進展する契機になるかもしれません。 モントリオール理工科大学の研究グループは、月の裏側で活動するのに必要な電力を確保する方法として、地球と月とのラグランジュ点(※)のひとつ「L2」に3機の太陽発電衛星(Solar Powered Satellite: SPS)を配備し、月面に設置した受信設備へワイヤレス給電する方法が最適解だとする論文を発表しました。 【▲ 月と地球とのラグランジュ点「L2」に配備した3機の太陽発電衛星(SPS)から月の裏側にワイヤレス給電する仕組みを示した模式図(Credit: Donmez & Kurt(2024))】※…ある天体が別の2つの天体から受ける重力や遠心力と釣り合って、安定できる点のこと。この場合、別の2つの天体は月および地球となり、人工衛星はラグランジュ点近傍の閉じた軌道(ハロー軌道)を周回する。 関連記事 ・まもなく画像公開

    月の裏側の資源開発に不可欠な電力をわずか3機の人工衛星がワイヤレスで供給するアイディア
  • 研究史上最古、37億年前の地磁気の証拠を発見 強度は現在並

    地球は固有の強い磁場を持つ天体の1つです。陸上に棲む多くの生物にとって欠かせない存在であるこの「地磁気」は、地球誕生から徐々に強くなっていったと理解されています。ただし、その正確な時期はよくわかっていません。 マサチューセッツ工科大学のClaire I. O. Nichols氏などの研究チームは、グリーンランドから産出した極めて古い岩石を調査し、約37億年前の地球に地磁気が存在した証拠を見つけました。これは最も古い時代の地磁気の証拠です。また、その強度は現在と比べてもそれほど弱くない値であることから、地磁気の形成や、古代の生命がどのように進化し、数を増やしたのかを探る上でも重要な発見となります。 【▲ 図1: 有害な太陽風を遮断する地磁気は、生命と大気の両方にとってシールドの役割を果たします。(Credit: NASA)】 ■「地磁気」は生命と大気の両方に重要 方位磁石が北を向くことからも

    研究史上最古、37億年前の地磁気の証拠を発見 強度は現在並
  • 天の川銀河と合体した銀河の痕跡を新たに発見 「シャクティ」と「シヴァ」と命名

    初期の天の川銀河は、複数の小さな銀河が合体して誕生したと言われています。近年、恒星の位置や運動方向に関する大規模なデータが揃ったことにより、合体した銀河の痕跡を具体的に知ることができるようになりました。 マックス・プランク天文学研究所のKhyati Malhan氏とHans-Walter Rix氏の研究チームは、大量の恒星が記録されている「ガイア」と「スローン・デジタル・スカイサーベイ」のデータを組み合わせて分析し、合体した銀河の痕跡を探りました。その結果、今から約120~130億年前という極めて初期の時代に天の川銀河と合体したと推定される、2つの銀河の痕跡を発見することに成功しました。両氏はこれらの銀河をヒンドゥー教の神話に因み「シャクティ(Shakti)」と「シヴァ(Shiva)」と名付けています。 【▲ 図1: 天の川銀河におけるシャクティ (ピンク色) とシヴァ (緑色) に属する

    天の川銀河と合体した銀河の痕跡を新たに発見 「シャクティ」と「シヴァ」と命名
  • 過去の地球の公転軌道は “予想以上” に予測困難 恒星接近を考慮したモデルで検証

    地球の公転軌道は長い時間の中で少しずつ変化することが知られており、過去に起きた極端な気候変動の原因となっているのかもしれません。しかし、公転軌道の変化を数学的に解析することは困難であり、過去の公転軌道を正確に予測できるのは5000万~1億年前までが限界であると考えられてきました。 しかし、オクラホマ大学のNathan A. Kaib氏とボルドー大学のSean N. Raymond氏によれば、地球の公転軌道を正確に予測できる期間はさらに約10%ほど短くなるようです。これまでの計算ではあまり考慮されていなかった、太陽系の近くを恒星が通過したことで巨大惑星の軌道が乱される影響を考慮した両氏は、5000万年より短い期間であっても正確な軌道予測が困難であることを突き止めました。 【▲図1: 恒星HD 7977の接近を考慮した地球の公転軌道の変化の計算結果。1点1点が、特定の時点での公転軌道の性質 (

    過去の地球の公転軌道は “予想以上” に予測困難 恒星接近を考慮したモデルで検証
  • 地球の新しい地質年代「人新世」の新設案を否決 その理由と背景は

    人類の活動は確実に地球環境を変えてきました。これを踏まえ、新しい地質年代として「人新世」を創設することが提唱され、2009年から国際地質科学連合の作業部会で議論が行われてきました。正式に地質年代として登録されるには、全部で3段階の議論が必要です。 国際地質科学連合の下部組織である第四紀層序小委員会にて2024年2月1日から6週間かけて審議と投票が行われた結果、人新世の創設は過半数の反対票で否決されました。ただし、この決定は人類が地球環境を変えたことを否定するものではなく、むしろ人新世という地質年代の重要性を鑑み、人類による環境改変を過小評価しないための否決であると言えます。 【▲図1: カナダ東部にあるクロフォード湖の湖底堆積物は、今回の案で人新世の基準となる地層として選ばれていました(Credit: Whpq (WikiMedia Commons / CC BY-SA 4.0) )】 ■

    地球の新しい地質年代「人新世」の新設案を否決 その理由と背景は
  • アメリカの「UFO」は西部地域で多く目撃? 真面目な研究から見えてきたもの

    「UFO」というとオカルトか何かのイメージが強いかと思われますが、実際には国防や科学研究といった真面目な場でも議論の対象となります。ただし、UFOという用語に付きまとうイメージから、科学的な研究は敬遠される傾向にありました。 ユタ大学のR. M. Medina氏とS. C. Brewer氏、およびアメリカ国防総省のS. M. Kirkpatrick氏は、アメリカ合衆国で目撃された12万件以上に渡るUFOの目撃情報を分析し、UFOが現れる場所には地域的な偏りがあることを発見しました。特に西側地域は、UFOが目撃されるホットスポットです。この偏りは、目撃情報のほとんどが実際に何らかの飛行物体を目撃している可能性が高く、全くの捏造やデマはそれほど多くはないことを示唆しています。個々の正体は相変わらず “未確認” であるものの、その地域の特性から航空機である可能性が高いかもしれません。 【▲図1:

    アメリカの「UFO」は西部地域で多く目撃? 真面目な研究から見えてきたもの
  • 約7億年前の全球凍結「スターティアン氷期」はなぜ起きた? その謎に迫る研究

    地球はその歴史の中で、表面全体が氷河に覆われる「全球凍結(スノーボールアース)」が何度か起こったと推定されています。しかし、なぜ全球凍結が起きたのか、またどのように “解凍” されたのかについてのメカニズムはほとんど分かっていません。 約7億年前に起こったとされる全球凍結レベルの極端な氷河期「スターティアン氷期」の発生原因を、地質記録とシミュレーションによって調査したシドニー大学のAdriana Dutkiewicz氏などの研究チームは、火山からの二酸化炭素放出量が少なくて岩石の風化による二酸化炭素の吸収が多かったために、大気中の二酸化炭素濃度が現在の半分以下まで減少したことが原因であると推定した研究成果を発表しました。興味深いことに、この状況は遠い未来に地球で起こる状況と似ています。 【▲図1: 全球凍結した地球の想像図(Credit: Oleg Kuznetsov)】■赤道すら凍りつく

    約7億年前の全球凍結「スターティアン氷期」はなぜ起きた? その謎に迫る研究
  • 「銀河が先かブラックホールが先か」長年の疑問に挑む新たな研究結果

    銀河の中心部には巨大なブラックホールが存在すると考えられています。そうなると必然的に生じるのが「銀河が先か、ブラックホールが先か」という疑問です。これまでは銀河が形成された後にブラックホールが誕生したというのが定説でした。 しかし、ソルボンヌ大学のJoseph Silk氏などの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による初期宇宙の観測データとシミュレーション結果を組み合わせた結果、銀河とブラックホールはほぼ同時に誕生し、ブラックホールが銀河の星形成を加速したとする研究結果を発表しました。これはウェッブ宇宙望遠鏡の観測で示された初期の銀河が予想より多く存在する可能性を裏付ける成果です。 【▲図1: 初期宇宙の銀河の活動の模式図。中心部のブラックホールの活動が活発化すると、その放射によって周りのガスが押しのけられ、恒星の形成が促されます(Credit: Roberto Molar C

    「銀河が先かブラックホールが先か」長年の疑問に挑む新たな研究結果
  • 日本の重力波望遠鏡「KAGRA」被災状況の詳細が判明 能登半島地震の影響

    2015年に「重力波」の観測に成功して以降、現在の天文学は重力波を宇宙の観測手段とする段階に入っています。岐阜県飛騨市に設置された大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」は、重力波の詳細な観測を行うため、他国の重力波望遠鏡と連携していました。 しかし、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」でKAGRAの装置の一部が損傷を受けたことが判明し、詳細な被災状況が2月5日に報告されました。現時点では具体的な時期は未定なものの、KAGRAは2025年1月の共同観測期間終了前までに観測運転を再開することを目標としています。 【▲図1: 神岡鉱山坑道内に設置されたKAGRAの一部(Credit: 東京大学宇宙線研究所 & 国立天文台)】■「重力波」は格的な天文観測の手段となりつつある1915年にアルベルト・アインシュタインが提唱した一般相対性理論では、重力に関する様々な現象が予言されていました

    日本の重力波望遠鏡「KAGRA」被災状況の詳細が判明 能登半島地震の影響
  • 直径約13億光年の巨大構造物「ビッグ・リング」を発見 宇宙原理に反する構造か

    私たちの宇宙について、広い目線で見れば天体や物質の分布が均質であるという「宇宙原理」が広く信じられています。しかし近年の観測では、宇宙原理に反すると思われる巨大構造物(宇宙の大規模構造)がいくつも見つかっています。 セントラル・ランカシャー大学のAlexia Lopez氏は、地球から約92億光年離れた位置(※)に、直径が約13億光年にも達する巨大構造物「ビッグ・リング(Big Ring)」を発見したと、アメリカ天文学会(AAS)の第243回会合の記者会見で発表しました。Lopez氏は2021年にも同様の巨大構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見していますが、両者は非常に近い位置と距離にあります。これは宇宙原理に疑問を呈する発見です。 ※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに

    直径約13億光年の巨大構造物「ビッグ・リング」を発見 宇宙原理に反する構造か
  • 「天王星」と「海王星」の “真の色” を確定 色から見る大気の詳細な情報

    惑星の外観について、「天王星は空のような薄い青色」「海王星は海のような深い青色」というイメージが一般的と思われます。しかし、公開されている天体の画像は様々な事情で補正がかけられていることもあるため、実際に人間の目で見た状況を正確に反映しているとは限りません。 オックスフォード大学のPatrick Irwin氏などの研究チームは、独自開発した惑星の色モデルに「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」と「超大型望遠鏡(VLT)」の観測データを適用し、天王星と海王星の肉眼的に最も正確な“真の色” を確定しました。その結果、天王星と海王星の “真の色” は緑色を帯びた淡い青色であり、海王星のほうがわずかに青色が強いことを除けばほとんど区別できないほどそっくりであることがわかりました。 今回の研究は、長年の天王星と海王星のイメージを変えるだけに留まらず、天王星の極地と赤道の環境の違いといった、観測が難しい遠方

    「天王星」と「海王星」の “真の色” を確定 色から見る大気の詳細な情報
  • 金属「ナトリウム」が高圧で透明な絶縁体となる理由を解明

    惑星内部のように極端な高圧環境では、物質の性質は大幅に変化します。多くの物質は電気を通す金属のような性質を持つようになりますが、一部の物質は電気を通さない絶縁体になるなど、傾向に当てはまらない場合もあります。 ニューヨーク州立大学バッファロー校のStefano Racioppi氏などの研究チームは、高圧で絶縁体になることが知られている金属「ナトリウム」について、電子の配置をスーパーコンピューターを使って計算することで、絶縁体になる理由を探りました。その結果、従来の考えとは異なり「高圧電子化物(High-Pressure Electrides)」となることが絶縁体になる理由であることが判明しました。高圧環境下での物質の性質には謎が多く、このノウハウは他の物質の研究でも生かされるでしょう。 【▲図: 鉱物油中に保存された金属ナトリウム。他の金属と同じく、よく電気を通す導体で、不透明です(Cre

    金属「ナトリウム」が高圧で透明な絶縁体となる理由を解明
  • 古代の恒星に初期宇宙で生成された「原子量260以上の原子核」の痕跡を発見

    鉄より重い元素が、宇宙でどのように生成されるのかはよくわかっていません。生成過程を調べるヒントの1つは古い年代の恒星に含まれている元素の比率で、生成過程を考察する上で注目されます。 ミシガン大学のIan U. Roederer氏などの研究チームは、天の川銀河にある42個の恒星の元素存在量を詳しく調べ、元素の生成過程を推定しました。その結果、「r過程」によって原子量260以上(※1)の原子核が大量に生成され、その後の自発核分裂で銀や重いランタノイド(※2)などの中程度の重さの元素が生成されたことが分かりました。これは重い元素の生成過程を調べる上で重要な発見です。 ※1…原子核に含まれる陽子と中性子の合計数を原子量と呼びます。 ※2…ランタン(原子番号57)からルテチウム (原子番号71) までの元素の総称。液晶ディスプレイや永久磁石など、先端産業に欠かせない用途を持つ元素が多数含まれています

    古代の恒星に初期宇宙で生成された「原子量260以上の原子核」の痕跡を発見