みんなで道徳的に、倫理的に、政治的に正しく振るまうよう求められる。それは、正しくないものが許されない、同調圧力の極致だ。言葉を監視する市民、正しさを強要する国家、そしてどこにも逃げられないシステム……。すべて出揃ったとき、『日没』は衝撃的なラストを迎える。作家の言葉は、不思議と現代社会と共鳴する。 《ラストは日没サスペンデッド、ゲームオーバーです。繰り返しになりますが、これは虚構ですが、現実は追いついてきていると思うのです。日本的な形で、今、香港で起きているような弾圧、監視社会化が進むのではないでしょうか。 その入り口は、もしかしたら行き過ぎたポリティカル・コレクトネスを求める声かもしれません。権力も社会もすべて差別を利用して、正しい表現を求めるかもしれない。そうなったら、危険です。》 『日没』からの夜明けはまだ見えない。それどころか、むしろ、こうも思うのだ。2020年はまだ薄暮なのかもし