満を持してリリースしたceroの3rdアルバム『Obscure Ride』は、間違いなく10年に一枚あるかないかのマスターピースであり、この作品により日本のポピュラーミュージックの水準は一気に引き上げられることになるだろう。新時代のメルクマールたる大傑作『Obscure Ride』の音楽的達成とは何なのか。 英語にgenuineという形容詞がある。「本物の」「正真正銘の」「混じり気のない」といった意味に訳されるが、日本でポップミュージックを創ろうという人間にとって、この言葉、というか感覚は、意識的であれ無意識的であれ、長い間付きまとってきたものだ。 言うまでもなく、ロック、ポップス、ジャズ、ヒップホップ……ゲーム音楽や昨今のEDMを除けば、日本で流通しているポピュラー音楽の大半はそのオリジンを欧米に求める。であるがゆえに、自分の鳴らす音にgenuineな、「本物の」響きは宿っているのか――