先進国で有給の育児休暇が保障されていないのは2カ国だけ。そのうちのオーストラリアでこの春、11年から有給の出産・育児休暇を義務付ける法案が可決された。アメリカは今や、そうした制度のない唯一の先進国になってしまった。 それでも小さな前進はあった。6月4日、連邦政府職員に4週間の有給出産休暇を認める法案が下院で可決された。実は昨年、同じような法案が下院で可決され、上院で否決されている。今回も簡単には上院を通過しそうにない。 そう考えると、オーストラリアの例は1つのヒントになるかもしれない。07年に首相の座に就いた労働党のケビン・ラッドは子育て支援を選挙公約に掲げた。彼は、与党だった保守派の自由党は子育て家庭の労働時間を増やす一方で、賃金引き下げの市場圧力から家庭を守っていないと批判。つまりラッドは、政府の責任を重んじる左派の立場に立ちながら、右派が得意とする「家族の価値」を前面に出したのだ。