著者はトルコの少数民族の言葉を長年研究している。本書は1991年に出版された「トルコもう一つの顔」の続編である。 前作では、著者が少数民族の言語を体系化しようとするフィールドワークと、それを検閲またはその研究成果を利用しようとするトルコ共和国政府との関係が中心であった。前作は、トルコ共和国内の少数民族の多様さと、単一言語、単一民族の近代的な国民国家たらんとする政府の方針と少数民族への厳しい取締り、弾圧の状況がよくわかる希有の書であった。著者と市井の人々との交流が、そこに権力による監視と弾圧があるために、美しくもはかなく描かれていた。 本書は1986年に著者が国外退去処分を受けて以降のことが記述されている。1994年から再びトルコでフィールドワークを行うことができるようになり、政府高官の手紙を持ってトルコ各地の調査をおこなった。その成果としてイスタンブールの出版社からラズ民謡集やラズ語文法を