<老人ホームの内定のため入居者として潜入した83歳の男性。ホームの入居者たちのさまざまな人生模様が浮かび上がる様子を描いたドキュメンタリー> 第93回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた南米チリ出身の若手女性監督マイテ・アルベルディの『83歳のやさしいスパイ』は、A&Aという探偵事務所が新聞に掲載した少し変わった広告がすべての発端になる。 「高齢男性1名募集。80歳から90歳の退職者求む。長期出張が可能で電子機器を扱える方」 その広告を見た老人たちが探偵事務所に集まってくる。面接にあたった探偵ロムロが彼らのなかから選んだのは、数か月前に妻に先立たれた83歳のセルヒオ。彼の任務は、老人ホームへの潜入捜査で、依頼人は、聖フランシスコ特養ホームに入所している母親が虐待を受けているのではないかと疑い、その証拠を求めていた。 セルヒオは、スマホや小型カメラを仕込んだめがねなどの扱