サン=テグジュペリは第2次大戦中、米国に亡命し『星の王子さま』を書いた。同作には祖国を出ていった者の惑いが投影されている。 王子の内なる闇が、子供の私には理解できなかった。ところが最近再読すると、この少年がヤングケアラーに見えてきたのだ。彼が独り切り盛りする星には、手入れを怠ると星を滅ぼす木や火山があり、注文の多い花は寝たきり者のようだ。 10代後半から介護を経験した今の私には、若者が持ち場を放棄して遠くへ行きたくなるのも、その後に抱えた心の重りもわかる。 思えば、宇佐見りん『かか』(河出書房新社)も壮絶なヤングケアラー小説だった。語り手「うーちゃん」は、離婚を経て「はっきょう」した母の代わりに中高生の頃から家事を支え、浪人中。母は家族に暴力を振るい、自傷を繰り返して死にたいと言う。彼女に子宮の手術が決まると、語り手はある思いと向き合うため、家事や介護を放置して旅立つ。 本作はケア労働と女
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