春には桜が街を彩り、常連客らが話に花を咲かせる大衆居酒屋、ジャズ喫茶や楽器店から流れてくる音楽――渋谷エリアの中でも、「昭和」の面影をそこここに残す桜丘町で、これまで数十年にわたり客を出迎えてきた多くの店が10月いっぱいで、その歴史に幕を閉じる。 同エリアでは今後、ビルの取り壊しが進み、大規模再開発に向け大きくかじが切られる。消えゆく街の「記憶」を写真と共に特集する。 古い街並みが残る渋谷の「ガラパゴス」 老舗氷店「高野商店」はこの地で70年 国道246号(以下、246)に架かる歩道橋を渡ると広がる桜丘町には、道玄坂やセンター街周辺など華やかなイメージのある渋谷の側面とは異なる昔ながらの風情が漂う。流行発信地や若者の街としてもにぎわってきた渋谷の中で、昭和を感じさせる古い街並みが残されてきた背景には、交通量も多い幹線道路が駅と街を分断してきた立地の影響が大きい。 渋谷駅西口歩道橋から見た桜