高齢化が進み、日本は年間130万人以上が亡くなる「多死社会」になった。多くの人が住み慣れた家での最期を望むが、かなえられていない。九州・山口・沖縄では、特に少ない傾向にある。自宅、施設、病院。それぞれの場所で悩みながら選択していく本人や家族の姿から、最期のあり方を考える。 福岡市博多区。古くからある住宅街の一角に、その家はあった。 まだ新しい2階建て。5月、招き入れられたリビングには、野球やサッカーの雑誌が積まれ、無線操縦の車のプラモデルが所狭しと並んでいた。この家に一人で住む田中雄二さん(仮名)の趣味の品々だ。 末期の直腸がんを患う田中さんは、最期を過ごす場所に、我が家を選んだ。妻子はなく、高齢の両親は介護施設に入居。「あと何か月生きられるかわからないけど、できれば、ここで逝きたいね」 この言葉から1か月後。田中さんは、この家で61歳の生涯を閉じた。 福岡市内の高校を出て大学に進学。デパ
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