エルサレムの一種の模造建築、聖地パレスティナの代用巡礼施設、プロテスタントに対するカトリックの要塞などさまざまに解釈されてきた宗教施設「サクロ・モンテ」。その起源は、聖地巡礼の実践の必要性が次第に失われた中世以降、危険な長旅を敢行できない者に巡礼の機会を提供すべく導入された代用の巡礼地の最終形態、「代用エルサレム」にある。 中世西欧の巡礼や聖地模造の伝統を受け継ぎ、北イタリアの宗教的諸事情の中で独自の近世的形態を獲得したその歴史を明らかにする。 序 第1章「サクロ・モンテ」の定義と研究史 1 「サクロ・モンテ」の定義 2 イタリアのサクロ・モンテ研究史 第2章 15世紀以前の西欧におけるエルサレムの模造建築 1 キリスト教徒のエルサレム憧憬とその模造の伝統、並びにサクロ・モンテの関係 2 14世紀以前のエルサレムの模造建築 3 15世紀のエルサレムの模造建築 第3章 ミラノ管区ヴァラッロの