概要 細胞は外からの刺激である増殖因子(注1)に反応して、増殖する、あるいは別の細胞に分化する、といった自分自身の運命を決めるまでに、細胞内の多数の分子による様々な反応を経て、増殖因子の刺激が伝達されていく。この反応は細胞内シグナル伝達機構(注2)と呼ばれる。しかし、シグナル伝達に係わる多数の分子のネットワークが外からの刺激のどういう情報を認識し、処理をして細胞の運命が決定されるのかは長い間謎であった。 シグナル伝達に係わる分子のネットワークは非常に複雑であり、ネットワーク内の個々の反応を理解しても、全体の反応を直感で捉えることは困難であるため、コンピュータシミュレーション(注3)を用いたシステム生物学(注4)が発展しつつある。しかし、個々の反応を文献情報だけによって収集して行ったコンピュータシミュレーションは精度が非常に悪く、実際の反応の予測に使えないことが大きな問題であった。本研究では