落書きをしなくなって久しい。教科書もノートも、いたるところ落書きだらけだったが、歳をとるにつれ、余白から落書きは消えていった。人はいつから落書きをすることをやめてしまうのだろうか。大人になる過程で、自分の絵心の無さに嫌気がさし、描くことが楽しくなくなってしまうのだろう。 しかし、草なぎ剛レベルの絵心の持ち主でも、描くコツさえ分かればあっという間に落書きの達人になれる。『ラクガキ・マスター 描くことが楽しくなる絵のキホン』(美術出版社)は、JTの広告「大人たばこ養成講座」や東京メトロのマナーポスター「家でやろう」などでおなじみのイラストレーター、寄藤文平(よりふじ・ぶんぺい)氏が、ラクガキの描き方を記した本だ。寄藤氏が、絵を描くときに何を考えているかを自分自身に取材し、まとめている。ラクガキの教科書であり、著者の絵にまつわるエッセイであるともいえる。どこか気の抜けたような味のあるイラストと、