――その時、勇者は剣を持ち、魔王の前に現れた。 勇者はただ独りであった。 魔王は玉座に在ったまま、勇者を迎える。 その後ろには姫の姿があった。 姫を返せと、勇者は言う。 取り返してみろと、魔王は嗤う。 姫は言葉もなく、ただ祈るように目を伏せていた。 長きにわたる旅の果て。 ――決戦のとき。 その戦いは、なぜかなかなか始まらないのだった。 _____ 俺は勇者。 突然だがいま、勃起している。 「ついに追い詰めたぞ、魔王!」 俺は叫んだ。ずっと前から用意していた、ラスボス戦用の口上だ。 でも勃起しているのでちょっとだけ声に張りがない。 「四天王はすべて屠った。もうこの城にはおまえひとりだ……覚悟しろ!」 そう、言いながらも、内股気味の前かがみ状態から脱することはできない。 なぜなら勃起しているからだ。 完全無欠のフル勃起だからだ。 ……いや、あれだ。誤解はしないでほしい。 別に俺はその、常に勃