首相が今憲法96条に限って改正を進めようとしている。記者会見で、国民投票で過半数の国民が改正に賛成していても、国会議員の三分の二を少し足りない議員の賛成では改正できないのではおかしいのではないか、という意味のことを語っていた。この点について憲法学者の発言が表に出てこないようなので、疑問の点を私なりに素人くさく議論してみよう。政治的な議論(ならびに広い意味でイデオロギー的、ないし価値観に関しての議論)は当然あるだろうが、ここではそのような点に関してではなく、あくまでも法理論的な側面に関してだけである。それと言うのも、首相の提案はそのイデオロギー的色合いを粉飾して、あくまでも純粋に法理論的・形式論的な議論として、それを進めようとしているからである。 初めに、憲法改正はどのような内容であっても、96条に定める手続き(国会の両院の三分の二以上の賛同を得て改正を発議し、国民投票の過半数をもって改正で