【祭りばやしが聞こえる】「ドキュメンタリーは自分の思いを描く創作である」と言い切った伝説のドキュメンタリスト木村栄文による、門外不出の傑作。テキ屋(香具師)の人生と胸の内を、作家・森崎和江と木村の視点で描く。(1975年1月24日放送『祭りばやしが聞こえる』、第30回文化庁芸術祭賞優秀賞受賞) 筥崎宮(福岡市)の秋祭り・放生会(ほうじょうや)には数百の露店がひしめく。旅から旅へ、浮き草稼業のしがない露天商は、歌人の顔も持つ。露店を束ねる大親分の姿からは、現代社会に飲み込まれつつあるテキ屋の伝統的な世界が見える。木村は裏社会の大物にもインタビューし、テキ屋の若者と酌み交わす。森崎和江は番組にこんな言葉を添える。 「私はこの後も、折に触れて祭りに出かけていくことでしょう。そして、感じ続けると思います。家を飛び出してテキ屋になった若者の心や、彼を案じている親御さんのことや、雨の日のお年寄りのテ