ノーベル賞の「日の丸」4本は、久しぶりの明るいニュースだった。未曽有の経済危機の中、未来を切り開く科学技術への期待は高い。科学技術創造立国・日本の抱える課題を、科学研究の「評価」という視点でとらえ、明日を展望することから、連載を始めたい。 政治主導 見えぬ評価 長さ40キロもある直線の地下トンネルで、光速近くまで加速した電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生の「ビッグバン」を再現する――。国際リニアコライダー(ILC)は、世界の素粒子物理学者が構想する次世代の大型加速器だ。質量の起源となるヒッグス粒子の性質を突き止め、宇宙の進化の謎を解くと期待される。 ILCの建設費は現在の見積もりで8000億円。米国は一時期、誘致に前向きだったが、巨費に二の足を踏む。文部科学省もILCには消極的だった。 そんな中、日本の素粒子分野の3氏が、物理学賞を独占した昨年のノーベル賞は、ILCを巡る状況を大きく変えた。