「農薬で作る」といわれるほど病害虫が多いリンゴ。無農薬、無肥料でのリンゴ栽培は「奇跡」と称される。だが、あくまで自然栽培にこだわり、国内で初めて成功させた生産者がいる。「リンゴ王国」青森県弘前市のリンゴ農家、木村秋則さん(59)。収入のない日々、奇人、変人扱いされながらも数々の苦難を乗り越え、今では自然農法の第一人者として国内外で指導している。(福田徳行) [フォト]無農薬無肥料「奇跡のリンゴ」を生んだ、木村秋則さんの半生 ◇ 昭和63年5月、岩木山麓(さんろく)に広がる88アールのリンゴ畑一面に真っ白なリンゴの花が咲き乱れた。無農薬、無肥料栽培を始めて11年目のことだった。 「天にも登るような気分でした。それまでの苦労が一瞬で吹っ飛びました」 木村さんは苦難の日々を述懐する。 農薬散布と肥料が常識とされるリンゴ栽培で、不可能を可能にした栽培方法を確立したことについて、弘前大農