科学の科学―コレージュ・ド・フランス最終講義 [著]ピエール・ブルデュー[評者]斎藤環(精神科医)[掲載]2011年1月9日著者:ブルデュー 出版社:藤原書店 価格:¥ 3,780 ■科学の現場の「構造」、明らかに 1998年、新3種混合ワクチンの接種が自閉症の原因となるとする論文が発表され、大きな反響を呼んだ。ところが最近の調査で、この報告が執筆者である医師のでっちあげだったと判明した。なぜ科学者がこうしたスキャンダルを起こすのか。 私たちは科学を厳正かつ中立な、自律性の高い学問だと考えている。しかしその科学にすら政治や人間関係といった不純な要因が影響を及ぼしてしまう。 社会学者ブルデューによれば、それは科学の現場が本来的にはらみ持つ、構造的な問題だ。この最後の著作の本書で、ブルデューは彼の思想のキーワードでもあると言うべき「界」「ハビトゥス」「文化資本」といった諸概念を自在に駆使して