真後ろから質問が飛ぶと首を180度回転させた。斜め後ろから話しかけられると一歩下がって横に並んだ。 試合前の囲み取材のときの風景である。 必ず相手の目を見て話そうとする姿勢に、前橋育英(群馬)の監督、荒井直樹の人間性がよく表れていた。ちなみに声は歌手の玉置浩二似だ。低音だが滑舌がよく澄んでいる。 律儀な性格が勝負弱さにつながっているのだと言われたこともあった。 「私学の監督っぽくない、ってよく言われますね。勝ちたくないのか、って。でも勝ったらそれも信念だって言われますから。僕は技術のことでは選手を絶対に怒らないって決めてるんです」 夏の甲子園は雰囲気が違う。夏に勝てて嬉しい。 荒井は日大藤沢高校(神奈川)を卒業した後、社会人のいすゞ自動車で13年間プレーした。母校の監督を経て、'99年に前橋育英のコーチとなり、'02年から監督を務める。 監督就任9年目、'11年春に初めて甲子園へ出場する。