岩手県宮古市田老地区にあった高さ10メートルの防潮堤は“人工衛星から唯一確認できる人工建造物”になぞらえて「万里の長城」と呼ばれていた。だが、地元住民らが信頼を寄せていたコンクリート構造の防潮堤を、東日本大震災の津波は防潮堤を簡単に乗り越え、総延長2.4キロのうち500メートルを破壊した。 東日本大震災の最大の特徴は、マグニチュード(M)9の地震により引き起こされた大津波の威力を見せつけたことだ。 津波は、地震で海底のプレート(岩盤)がはねあがることで引き起こされる。東北大工学部の今村文彦教授(津波工学)は「津波が陸に遡上(そじょう)して、高さが1~2メートルになっても、水圧は時速50キロの乗用車が突っ込んでくるのと同じ衝撃力を持っている」と話す。 さらに津波に巻き込まれた漂流物が、破壊力を増加させた。しかし今村教授が、街を破壊する津波の高さとしてあげるのはわずか「2メートル」。10メート