作家の井上ひさしさんは揮毫(きごう)を頼まれると、「むずかしいことをやさしく/やさしいことをふかく/ふかいことをゆかいに/ゆかいなことをまじめに書くこと」とよく記す。この極意は日々の実践の集大成になる。特に大事なのは最初の二行だという▼世の中の動き、人の心は複雑で難しい。まずは分かりやすく伝える。次の段階で本質に迫り、深く考えていく。メディアの使命でもあるが、実践することは簡単ではない。自戒を込めて書くと、「やさしく」を単純化、娯楽化と解する傾向がある▼時代が要求しているともいえる。昨日の朝刊・政治特集面では、キャラクターの調査研究などをしている会社の相原博之社長が「アニメ的な世界にどっぷりつかって育った若者たちは、複雑な現実より単純化したキャラにリアリティーや親近感を感じている」と指摘していた▼若者だけではない。小泉純一郎元首相のワンフレーズに、多くの人が拍手喝采(かっさい)したことは記
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