ナンパ師になら誰にでもナンパの原体験というものがある。自分の場合、それは19歳の夏、カナダの地方都市であった。夏休みの暇を持て余して1ヶ月近くアメリカ旅行に出かけていた時の話だ。 旅行好きの人にはわかってもらえると思うのだけど、旅行者にとっては「ローカルピーポーに声をかける/かけない」は死活問題である。旅行の価値がその行為に大きく左右される。たった一つの声かけでその街の概要をローカルの視点から教えてもらえて、そこら中ガイドしてくれて、下手したらご飯やらビールすらご馳走してもらえる。それはセックスができる/できない、とかそんな些細な問題とは比べるべくもない。少なくとも当時はそうだった。19歳ではじめて海外旅行に出かけて、そして、いみじくも早々とその問題に気づいてしまった自分は、どうやって自分のつたない英語でローカルに声をかけて、そして円滑なコミュニケーションをとっていこうかと考えあぐねていた