山下玲奈さん=当時(8)=を失った母、和子さん(57)は玲奈さんの誕生日の5月1日、いつものようにケーキを買うため店に並んだ。 玲奈さんの誕生日は、ケーキを買って皆で祝うのが家族の習慣だ。だが今年はふと、「玲奈はいないのに、なんでケーキを買おうとしているんだろう」と思い、その瞬間、涙があふれた。「27歳なら『ケーキなんかいらない』って言うのかな」。今も、ふとした瞬間に感情がこみ上げる。 今年は新型コロナウイルスの感染拡大で日常生活も一変し、落ち着かない日々が続いた。「今の時代に玲奈がいたら、どんな様子だったんだろう」と思う一方で、「何があっても、亡くなった事実は変わらないんだ」と改めて現実を実感する。 平成22年から、大阪教育大で教師を目指す学生に対し、授業の一環として、自身の経験や命の大切さを伝えている。年1、2回の取り組みも、今年で10年を迎えた。 語るのは、玲奈さんへの思いや事件後に