日本がファシズム化したと言われる1930年代は「暗い谷間」の時代などではなかった。スクリーンには生き生きと消費を楽しむ人々がいた。栗島すみ子、田中絹代、琴糸路、原節子らがモダン・ガールとして登場した映画を分析。大衆化された消費文化=モダン・ライフを称揚する映画と戦争の意外な共犯性を論じ、資本主義と戦争の関係に迫る。 【編集者の眼】 本書は、日本が戦争へと突き進みファシズム化した1930年代を中心に、映画と社会の関わりを考察する。戦争と映画の関係を考えるとき、まず思い浮かべるのが、戦意昂揚のプロパガンダ映画だろう。しかし当時の映画を振り返ってみると、必ずしも暗い世相や時代の閉塞感を描くものばかりではなかった。むしろ、社会が「平和に見える」映画が量産されていたというのである。 30年代の日本映画がこぞってテーマにしたのは戦争ではなく「モダン・ライフ」だった。満州事変後に景気が好転した日本で、大