新宿バルト9に『ドライブ・マイ・カー』を観に行った。深夜1時から朝4時まで上映するレイトショーだった。ネットニュースでロシアの劇作家・チェーホフの作品『ワーニャ伯父さん』との関係が取り沙汰されていたから、事前に青空文庫で日本語訳を読んだ。それが良くなかったのだが……。 映画は、ベッドの上で夫婦が何かしらの物語について話しているところから始まる。夫は劇団の俳優・演出家で、妻は脚本家。広い家で、上質な家具に囲まれる豊かな暮らし。唯一の子どもが肺炎で亡くなってからは二人で暮らしている。普通でないのは、妻がセックスの後に無意識下で脚本を創作しだす不思議な性質を持っていることと、夫が軽度の緑内障にかかっていることだけだ。 どちらも仕事は順調で、夫にはしばしば出張があった。しかしある日、出張の予定がキャンセルになって家に帰った夫は、妻が若い男とセックスしている姿を目撃してしまう。だが夫は何も言わずにや