前回までのあらすじ 老舗 大日本鉄鋼の3人だけの部署、第三企画室は新会社オルタナティブ・ゼロとして独立した。旭山隆児(あさひやまりゅうじ)は社長、風間麻美(かざまあさみ)は第三企画室室長、楠原弘毅(くすはらこうき)は次長だ。風間のプロジェクトは、オートバイの整備をするガレージ村。そこにやってきたカメラマン進藤は、風間の元彼だった。 【登場人物の紹介はepisode:zeroをどうぞ】 「飛ばしすぎるなよ」 旭山隆児はバルコニーから京浜工業地帯を見ている風間麻美の背中に声をかけた。 ガレージ村が本格的にスタートして、風間のエンジンは全開になっている。部下が輝いているのを見るのはうれしいものだ。けれど彼女がつくため息を聞く回数も増えている。息を止めて全速で泳いでいる心が、水面で酸素を求めているようだ。 東の景色を見ていると、西に傾いた太陽が照らし出す建物のコントラストが美しい。 「すっかり定位