印刷と不可分だった「出版」がデジタル化したことで登場した「コンテンツ」という言葉は要注意だ。欧米の出版社は「ハードカバー→ペーパーバック→E-Book」という順序の階層を考え、二級市民であるE-Bookが上級市民=ハードカバーの邪魔をしないように発売時期と価格設定を操作しようとしている。E-Bookを同一コンテンツの劣った姿であるとしているわけだ。しかし、出版を付加価値を提供するプロセスとして考えると、印刷製本で実体性を付与された本と、再生装置に依存する電子データに過ぎないE-Bookとは、映画とビデオ、コンサートとiPodくらいに違うように思われる。 文化装置としての製本から本を考える 本とE-Bookの位置関係を考える上で、物理的な本のほうをいま一度考えてみる必要があると思われる。手掛かりとなるのは、書店にある大量複製された普通の本とリーダで読むE-Bookの中間に登場してきたEspr