五節《ごせち》の君は人に隠れて源氏へ手紙を送った。 琴の音に ひきとめらるる 綱手縄《つなてなは》 たゆたふ心 君知るらめや 音楽の横好きをお笑いくださいますな。 と書かれてあるのを、 源氏は微笑しながらながめていた。 若い娘のきまり悪そうなところのよく出ている手紙である。 心ありて ひくての綱の たゆたはば 打ち過ぎましや 須磨の浦波 漁村の海人《あま》になってしまうとは思わなかったことです。 これは源氏の書いた返事である。 明石の駅長に詩を残した菅公のように源氏が思われて、 五節は 親兄弟に別れてもここに残りたいと思うほど同情した。 【源氏物語 第十二帖 須磨(すま)】 朧月夜との仲が発覚し、追いつめられた光源氏は 後見する東宮に累が及ばないよう、 自ら須磨への退去を決意する。 左大臣家を始めとする親しい人々や藤壺に暇乞いをし、 東宮や女君たちには別れの文を送り、 一人残してゆく紫の上
![【源氏物語319 第12帖 須磨53】五節の君は源氏に手紙を送った。明石の駅長に詩を残した菅公のように源氏が思われて、五節は大変 同情した。 - 源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/745bb273985798c7323661eb2d0a0395469804c5/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fs%2Fsyounagon%2F20230503%2F20230503123347.png)