だれが謳った音階理論?──小泉文夫の歌謡曲論、その後 | 増田聡 Who Sings the Theory of the Musical Scale?: Fumio Koizumi's Study of Japanese Popular Music, and the Sequel | Satoshi Masuda 音楽批評に対して知的に興奮させられることは極めて少ない。他の表象文化諸分野における批評の現状と比べるとそれは明白であろう。その原因はおそらく、音楽への学的な分析アプローチの主流が未だに形式主義的美学(その最も洗練された形態としてのシェンカー理論は、アメリカではほぼ自然科学同様に受容されている)に依存していることと、消費文化のロマン主義的なエートスを背景にした「作者への欲望」の自堕落な蔓延によるものだろう。 これは批評対象の高尚さ/低俗さの別を問わない。クラシック批評もポップ批評も