「全員出して勝つ。それがいちばんです」 決勝前日、三重の監督・中村好治は意気込みを尋ねられ、そう語った。 三重は準決勝までの全5試合で、登録メンバー18人中15人までがすでに出場を経験していた。 「ほぼ使えるんじゃないかな。みんながんばってきたのを知ってますから。技術うんぬんより大事なものがある。そういう価値観でやってきたので」 これがたとえば大会序盤、ひとつの理想として語っているのならわかる。だが中村は甲子園の決勝という舞台で、本気であと3人使うつもりでいた。 「10打数3安打の選手より、10打数1安打でも使いたいと思う選手はいるじゃないですか。だから、そういう展開になればいいなと思ってます」 1点を追う展開で、初出場の選手を次々と。 期待に反し、大阪桐蔭との決勝は1点を争う大接戦となった。 ところが3-4と1点ビハインドの8回裏、中村が動く。そこまで大阪桐蔭の強力打線を何とか4点に抑え