2014年9月30日更新 2014年10月3日よりTOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほかにてロードショー 双子の美少年を通して戦争のむごさを描く人気小説の、正しい映画化「映画化は不可能だと言われてきた」というのは使い古された宣伝文句で、ほとんどの場合、信用ならない。しかし、アゴタ・クリストフの「悪童日記」はもしかしたら、本気でそう思われてきた小説かもしれない。なぜならこの小説は、あまりにも特異な文体をもった傑作だからだ。おそらく中欧のどこか。第一次世界大戦が始まり、双子の美少年が疎開先の“小さな町”で、過酷な状況を生き抜くために強くなろうとする物語は、双子の日記として表出される。主語は、つねに一人称複数の「ぼくら」である。「ぼくら」はノートに真実しか書かない。曖昧な正しさしかもたない感情表現を避け、淡々と叙事だけを連ねる。一切の感傷を排した簡素な文章はそれだからこそ読者の心に深く切