◇「大企業vs.国民」の残滓◇ 政府は5月13日に福島第一原子力発電所事故をめぐる賠償(補償)スキームを決定した。その骨子は「国民負担の最小化」にあるとされる。一見、耳ざわりがよい言い回しではあるが、少し考えるとこれほど摩訶不思議な方針(?)はない。 賠償額を一定とするなら、そのために必要な負担の大きさが変わることはない。無から有を生み出すことはできない。当たり前である。そして賠償金を外国が負担してくれるわけはないのだから、日本国内の経済主体が負担するしかない。結局は賠償の問題は誰が負担するかという分配の問題なのである。 国内の誰が負担するのか。第一義的には東京電力関係者ということになるのだろう。同スキームにおいても、東京電力のできるかぎりのリストラ、資産売却を前提とするとしている。これを受けて、東京電力は役員・幹部報酬の一部抑制や顧問制度の廃止、資産売却などの方針を打ち出している。