第一部 日本文化と漢字・漢文 第二章 漢文と中国語 (1)中国語音読入門(ひっくり返らないこと) 漢文は訓読によって日本語にすっかり取りこまれておりますが、もともとは古代中国語の文語文です。そのため、漢文は訓読すべきではなく、中国語で棒読みするほうがよいという強い意見(荻生徂徠や倉石武四郎博士)があります。 日本漢文の場合は、外国文学ではなく国文学ですから、訓読で読むのが正統な読み方です。しかし、漢文は、東アジアにおけるインターナショナルな文学表現です。ですから、中国人は日本漢文をも中国語として読みます。 最近、中国・台湾でも日本漢文への関心が高まっています。ですから、われわれ日本人も漢文を中国語で読むとはどういうことかを、ある程度は弁えておく必要があると思います。そこで、本章で簡単に中国語に触れておくことにしました。 それでは、まず西郷隆盛(さいごう・たかもり、1827-1877)の漢詩