日記で読む文豪の部屋 [著]柏木博 名だたる文豪のユニークな自宅が題材となっているが、日本人にとって自宅とは何なのか、人間にとってそもそも家とは何なのか、が本書の真のテーマである。文豪はサンプルであり、わが家をめぐって思い悩むわれわれの分身である。 本書の成功の鍵は、日記と自宅の相似の発見である。どちらも基本的には私的なメディアだが、他人に見られたい気持ちがないわけはない。日本人はこのねじれた感情をベースにして、世界に例のない独自な「私」文化を築いてきた。「私」を見せたい気持ちがストレートに表出される西洋人の家とは違う、世界に類のないユニークな自宅文化が生まれたことが明かされる。日記の延長に日本独特の私小説が成立した事情にも、どこか似ている。日本人は、あいまいで複雑な「私」を、文化へと転換したのである。 複雑な「私」の産物である家は想像を超えた多様な形をとる。たとえば、夏目漱石は、家本体よ
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