日記で読む文豪の部屋 [著]柏木博 名だたる文豪のユニークな自宅が題材となっているが、日本人にとって自宅とは何なのか、人間にとってそもそも家とは何なのか、が本書の真のテーマである。文豪はサンプルであり、わが家をめぐって思い悩むわれわれの分身である。 本書の成功の鍵は、日記と自宅の相似の発見である。どちらも基本的には私的なメディアだが、他人に見られたい気持ちがないわけはない。日本人はこのねじれた感情をベースにして、世界に例のない独自な「私」文化を築いてきた。「私」を見せたい気持ちがストレートに表出される西洋人の家とは違う、世界に類のないユニークな自宅文化が生まれたことが明かされる。日記の延長に日本独特の私小説が成立した事情にも、どこか似ている。日本人は、あいまいで複雑な「私」を、文化へと転換したのである。 複雑な「私」の産物である家は想像を超えた多様な形をとる。たとえば、夏目漱石は、家本体よ
若者を対象とする研究者と約60人の大学生が「いまどきの若者」について計30時間以上、徹底的に語り合った。そこから見えてきたのは、バブル世代などの大人とは大きく異なる価値観だ。議論は一冊の新書にまとめられた。題して「さとり世代――盗んだバイクで走り出さない若者たち」。 著者は博報堂ブランドデザイン若者研究所(通称・若者研)のリーダー、原田曜平さん(36)。5~8月、若者研に「現場研究員」として参加している首都圏や関西圏の大学生と、消費、恋愛、友だち関係など幅広いテーマについて語り合った内容をまとめた。 スキーブームの当時、ウエアを毎年買い替えていた人もいたというバブル世代について「エコじゃないです」(3年・女性)。海外旅行は「日本も海外も生活様式が変わらない。景色しか変わらないなら別に行かなくてもいいかな」(3年・男性)。「ブランド品を欲しがるのは『下流』です」(4年・女性)。 今の大学生は
■商店街は“前例がない”ことで再生する 面白くてたまらん。水木しげるロードといえば有名な商店街だが、ここが誕生してから有名になるまでの話がとにかく面白い。 鳥取県境港(さかいみなと)市の商店街に当地出身の水木しげるのマンガに登場する妖怪の銅像を設置する、という計画が持ち上がったら、反対の声が巻き起こった。前例も成功例もない、銅像を置くと車道が狭くなって駐車スペースがなくなり来店者が減る、妖怪なんて気味悪い。反発があまりに強いので部分的に銅像設置したら、そこが人気になった。そうすると「妖怪なんて気味悪い」と反対してた商店主が「なんでウチの店の前にはないんだ、不公平だ」と言い出したという。実にありそうな話で笑う。 著者は地域再生プランナーで、住民が主体的に持続可能な町づくりにかかわろうとするスローシティ運動の提唱者だ。「こういう(身勝手で)困った人たちを含めて『協力者を増やす』ことが、本物の成
リニューアルオープンして半年が経ったが、図書館前の駐車場(約90台)は平日でも午後には満車になることが多い=武雄市武雄町 リニューアルオープンから1日で半年が経った佐賀県武雄市図書館。当初目標だった年間50万人を9月末で達成し、市の観光名所になっている。一方、民業圧迫と開館当初から物議を醸してきた課題はどうなったのか。 「メディアでも図書館と一緒に取り上げられ、県外の車も増えている」。笑顔で話すのは、図書館にほど近い、年間約33万人が訪れる武雄温泉の担当者だ。4月以降、1カ月の客が前年同期と比べて200~400人ほど増えたという。市によると、貸し出し利用者の割合でみると、31・7%が武雄市以外の県内、9・0%が県外からの利用だ。 だが、「民業圧迫」の批判は根強い。 物議を醸しているのが、指定管理者のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が発行するTカードを図書カードとして使え、自動貸
血盟団事件 [著]中島岳志 冒頭から一気に引き込まれた。話は五・一五事件で元陸軍軍人の西田税を狙撃した血盟団員・川崎長光へのインタビューから始まる。血盟団事件の関係者が存命していたことにまず驚いたし、本人を探し出して話を聞き出したところに著者の並々ならない気魄(きはく)が感じられて目が離せなくなった。 血盟団事件とは昭和7年に宗教家井上日召に率いられた若者たちが引き起こした連続テロである。元蔵相の井上準之助と三井財閥総帥の団琢磨が暗殺され、陰惨なテロの時代の引き金を引くことになった大事件だ。血盟団というおどろおどろしい名前の得体(えたい)の知れない集団が、「一人一殺」という禍々(まがまが)しいスローガンを掲げたことで、この事件には暗い昭和のイメージが強くまとわりついている。 時代はちょうど世界恐慌の影響で経済が悪化の一途をたどった頃だった。農村は貧しさで疲弊し、富を独占する財閥と無力な政党
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