ずいぶん昔のことだけれど、保護者面談で夜の小学校を訪ねたことがある。私のところは共働きなので、その日の最後に回してもらったのだ。 担任はベテランの女性教師で、いつものように、子どもの授業態度についてあれこれ注意された。ぺこぺこと頭を下げて教室を出ると、誰もいない廊下の向こうから押し殺したようなすすり泣きが漏れてきた。その教室には煌々と明かりが灯り、窓から覗くと、十数人の母親が押し黙ったまま若い女性を取り囲んでいた。 その後、知り合いの親たちに事情を聞いてみると、そのクラスは教師が生徒を管理できず、トラブルが相次いで苦情が絶えないのだという。私が見たのは、クラスの母親たちが学級運営について教師に問い質している場面だった。いまなら“モンスターペアレント”ということになるだろうが、当時はそのような言葉もなく、親が教師を私刑(リンチ)するかのような光景に大きな衝撃を受けたことを覚えている。 とはい