まったく驚いたことに、ぼくが翻訳した本の冒頭2章を音読した音声データが、ぼくの同意なく公開されました。しかもそのことは「不心得な個人が偶発的に」ではなく、『WIRED』日本版の前編集長である若林恵氏の指示のもと、黒鳥社という団体のれっきとした事業として、組織的に、計画的に行なわれました。 事後に問い合わせたところ、公開停止してくれたまではよかったのですが、なぜそんなことが起こったのかについての説明はただひたすら末端の担当者に責任を押し付けるものでした。ぼくが最も知りたかった点すなわち、この音声事業は、マイナーな著者・訳者の「宣伝したい」という望みに付け入って、自分では一文字も作ることなくコンテンツにタダ乗りする、海賊版まがいのモデルに基づいているのではないか、という疑念については、いくら質問しても「そうではないのだ」と思えるだけの答えをもらえませんでした。 繰り返しますが、相手は『WIRE