生命の連続性を担う唯一の細胞、生殖細胞 私たちの生はたったひとつの卵にひとつの精子が受精した瞬間に始まりますが、不可逆的な時間経過により恒常性を保つことが困難となった個体は最終的には必ず死へと向かいます。受精卵から生み出される約37兆個、200種類以上の細胞のほとんどは死へ向かう運命にあり、そのなかで唯一、卵・精子の元となる始原生殖細胞へ変化した細胞のみが次世代を再生産することができます。一世代限りの儚い運命の「体細胞」、そして世代を超えて永続的に存在し、種の連続性を維持する「生殖細胞」。なぜ生殖細胞だけにこのような特殊な能力が備わっているのでしょうか? 生殖細胞は、「すべての細胞へ変化できる能力」、「遺伝情報の多様化」、「ゲノム情報の安定性」など体細胞にはない特殊な能力を持っていますが、私たちはそのなかでも「すべての細胞へ変化できる能力」、専門用語で多能性と呼ばれる能力に着目して研究を行