「究極のナショナル・ヒストリー?―ピエール・ノラと『記憶の場』―」 本学研究科教授 西洋史学 谷川 稔 この公開シンポジウムでは、私自身の専門を離れ、より一般的な歴史学方法論をめぐる素材を提供し、共通論題となっている「歴史学の現在」の一端を考えていくことにしたい。その素材として、今月に日本語版の第1巻が公刊されたばかりのピエール・ノラ編(谷川稔監訳)『記憶の場』(岩波書店)を取り上げる。原著は、フランスの歴史家ピエール・ノラが1984年から1992年にかけて編纂した浩瀚な論文集 Les lieux de mémoire 全7巻、記念碑的労作として知られている。近年、日本でもおおいに語られる「記憶」あるいは「記憶と歴史」という流行語の源となった本家本元の作品である。 (1) 学術ジャーナリスト、ノラ (省略) (2)『記憶の場』―その構成と歩み― この学術ジャーナリスト、ノラが、2001年6